判例紹介:文書提出命令申立

名古屋の探偵Nagoya

これは名古屋の事案ではないが参考として紹介する。

主文

本件申立てをいずれも却下する。

理由
第1  申立ての趣旨

申立人らは、次のとおり、相手方株式会社甲(以下相手方甲という。)に対し、別紙文書目録表示の各文書、相手方株式会社乙(以下相手方乙という。)に対し、別紙文書目録2(3)を除く、同目録表示の各文書、相手方丙株式会社(以下相手方丙という。)に対し、別紙文書目録2(3)を除く、同目録表示の各文書の提出を命ずる旨の決定を求めた(以上、申立人らが提出を求める各文書を、以下本件各文書という。)

1 文書の表示

別紙文書目録記載のとおり。

2 文書の趣旨

(1)別紙文書目録1表示の各文書(以下本件文書1という。)相手方らにおいて、加盟店の審査、管理がどのように行われていたかを明らかにするもの。

(2)別紙文書目録2表示の各文書(以下本件文書2という。)相手方らが、株式会社X(以下Xという。)と加盟店契約を締結するに当たり、どの程度の調査をしたのか、どのような情報を把握していたのか、それらの情報をもとに、相手方ら内部でどのような判断がなされたかを明らかにするもの。

(3)別紙文書目録3表示の各文書(以下本件文書3という。)相手方らが、Xと加盟店契約を継続するに当たり、どの程度の調査をしたのか、キャンセル率、クレーム事例を把握していたか、それらの情報をもとに、相手方ら内部でどのような判断がなされていたかを明らかにするもの。

3 文書の所持者

相手方ら。

4 証明すべき事実

(1)相手方らが、Xとの加盟店契約を締結したとき及び締結後において、加盟店の審査管理基準を作成していたにもかかわらず、それを遵守していなかった事実、または相手方らが加盟店審査基準を作成すべきであったのにそれを怠っていた事実。

(2)相手方らが、Xとの加盟店契約締結に当たり、同社の販売方法、営業実態、経営内容、他の信販会社の動向(例えば、平成9年9月に株式会社Yが与信を停止し、同年12月にZ株式会社が与信を停止していた事実)等を調査し、Xが破綻必至であることを認識し、または認識し得た事実。

(3)相手方らが、Xとの加盟店契約締結後、同社の販売方法、営業実態、経営内容、他の信販会社の動向等を調査し、Xが破綻必至であることを認識し、または認識し得た事実。

5 文書の提出義務の原因

本件各文書は、民訴法220条4号の文書に該当し、同号の定めるイないしハの例外規定(平成13年法律第96号(以下改正法という。)による改正後は、イないしホ)には該当しない。

第2  当事者の主張

1 相手方らの主張

(1) 相手方甲の主張

ア 本件文書1について

本件文書1は、相手方甲自身のリスク管理のために自主的に作成しているものであり、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、そもそも外部の者に公開することを予定していない文書である。
加盟店の審査、管理を適切に行うことは、加盟店の不正を見抜き、顧客の財産やプライバシーを守ることとなる。しかし、加盟店の審査や管理のマニュアル、基準等が公開されるならば、加盟店や一般顧客が審査、管理のノウハウを知るところとなり、マニュアルや基準の裏をかく不正行為を助長するおそれがある。そのような対応がなされれば、相手方甲は、正確な情報を集めることができず、自由で迅速かつ正確な意思形成及び判断をすることができず、加盟店管理が不可能となり、ひいては一般顧客に重大な害悪をおよぼすおそれがある。

また、相手方甲にとって、加盟店をどのように管理するかは最も重要な営業上のノウハウ、企業秘密であり、これらが公開されて他の信販会社などの企業に明らかになると重大な営業上の損失を被ることになる。以上より、本件文書1は、民訴法220条4号ハ(改正法による改正後は同号ニ。以下同じ。)に定める専ら文書の所持者の利用に供するための文書(以下自己専使用文書という。)に該当するため、相手方甲には、当該文書の提出義務はないというべきである。

イ(ア)本件文書2(1)について

相手方甲は、本件文書2(1)を所持していない。また、本件文書2(1)は、信販会社内部において、加盟店契約についての意思形成を円滑・適切に行うために作成される文書であって、法令によってその作成が義務付けられているわけではなく、加盟店契約の是非の審査に当たって作成されるという文書の性質上、忌憚のない評価や意見も記載されることが予定されている文書である。よって、同文書は、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると信販会社内部の自由な意見の表明に支障を来たし、信販会社の自由な意思形成が阻害されるおそれがある。したがって、本件文書2(1)は、自己専使用文書に該当するため、相手方甲には、当該文書の提出義務はないというべきである。

(イ)本件文書2(2)について

相手方甲は、本件文書2(2)を所持していない。また、本件文書2(2)は、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると、今後、金融機関からの聴取調査が不可能となり、信販会社に看過し難い不利益を生ずるおそれがある。したがって、本件文書2(2)は、自己専使用文書に該当するため、相手方甲には、当該文書の提出義務はないというべきである。

(ウ)本件文書2(3)について

相手方甲は、本件文書2(3)を所持していない。(エ)本件文書2(4)について上記文書は、相手方甲主張事実立証のため、本案訴訟において、乙A第2号証として提出した。それ以外の文書については、相手方甲は所持していない。

ウ(ア)本件文書3(1)について

相手方甲は、本件文書3(1)を所持していない。また、上記文書は、自己専使用文書であり、相手方甲には提出義務はない。その理由は、前記イ(ア)と同じである。

(イ)本件文書3(2)について

相手方甲は、上記文書を所持していない。
また、本件文書3(2)は、興信所(探偵 調査会社)との契約上、第三者へ開示することが厳禁されている。また、信用調査という調査の性質上、第三者へ公開されないことが保証されていなければ、興信所(探偵 調査会社)は自由な意見の表明ができず、興信所(探偵 調査会社)はもとより、依頼者も満足な情報の提供を受けられないことになるから、著しい不利益を受けることになる。したがって、本件文書3(2)は、自己専使用文書に該当するため、相手方甲には、当該文書の提出義務はないというべきである。

(ウ)本件文書3(3)について

相手方甲は、本件文書3(3)を所持していない。

(2)相手方乙の主張

ア(ア)本件文書1(1)について

本件文書1(1)は、単なる客観的事実の記録にとどまらず、加盟店契約の締結、条件変更等についての内部的な意思形成に関する文書であり、法令によってその作成が義務付けられたものではなく、文書の性質上、加盟店契約の締結、条件変更等の判断材料として相手方乙の独自のノウハウや忌憚のない評価や意見も記載されることが予定されているものである。よって、同文書は、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると信販会社内部の自由な意見の表明に支障を来たし、自由な意思形成が阻害されるおそれがある。したがって、本件文書1(1)は、自己専使用文書に該当するため、相手方乙には、当該文書の提出義務はないというべきである。

(イ)本件文書1(2)について

相手方乙は、本件文書1(2)を所持していない。

イ(ア)本件文書2(1)について

上記文書は、自己専使用文書であり、相手方乙には提出義務はない。その理由は、前記ア(ア)と同じである。

(イ)本件文書2(2)について

相手方乙は、本件文書2(2)を所持していない。

(ウ)本件文書2(4)について

相手方乙は、上記文書につきX作成のものは所持していない。相手方乙作成のものは所持しているが、同文書は、自己専使用文書であり、相手方乙には提出義務はない。その理由は、前記ア(ア)と同じである。

ウ(ア)本件文書3(1)について

上記文書は、自己専使用文書であり、相手方乙には提出義務はない。その理由は、前記ア(ア)と同じである。

(イ)本件文書3(2)について

相手方乙は、本件文書3(2)を所持していない。

(ウ)本件文書3(3)について

相手方乙は、上記文書につきX作成のものは所持していない。相手方乙作成のものは所持しているが、同文書は、自己専使用文書であり、相手方乙には提出義務はない。その理由は、前記ア(ア)と同じである。

(3)相手方丙の主張

ア本件各文書の必要性

申立人らは、相手方らに、加盟店を審査、管理すべき法的義務があることを前提として、その審査、管理義務違反となる事実を立証するためとして、本件各文書の提出を求めるものであるが、そのような審査、管理義務は、法的に認められるものではないから、その義務違反となる事実の主張は失当である。したがって、審査、加盟店義務違反となる事実の立証もまた失当、かつ無用のものであるから、本件各文書を証拠として取り調べる必要はないというべきである。

イ本件各文書の存否、提出義務について

(ア)a本件文書1(1)について

上記文書は、相手方丙の加盟店の信用調査及び管理を内容とする従業員のためのガイドライン的なマニュアル(内部文書)であ
る。リスク管理の観点から従業員の指針とするものである。
したがって、文書の内容上も営業上の秘密に属するばかりか、これまでの相手方丙の20年以上のノウハウの蓄積として作成さ
れたマニュアルであり、これを公表することは同業他社、加盟店に相手方丙による信用調査及び管理のノウハウを曝す結果とな
り、今後の営業活動に測り知れない影響を与えるものである。よって、本件文書1(1)は、自己専使用文書に該当するため、相手方丙には、当該文書の提出義務はないというべきである。

b本件文書1(2)について

相手方丙は、本件文書1(2)を所持していない。相手方丙は、加盟店を大量に有するものではなく、具体的事案に即して個別に加
盟店審査を実行しているからである。

(イ)
a 本件文書2(1)について

相手方丙は、Xと加盟店契約を締結するに際し、興信所(探偵 調査会社)にXの信用調査を依頼したことがあり、その調査の報告書は所持しているものの、それ以外の文書は所持していない。
なお、上記興信所(探偵 調査会社)の調査報告書は、興信所(探偵 調査会社)において、民訴法197条1項3号の職業の秘密に関する事項が記載された文書であり、かつ黙秘の義務を免除されたものではない(以下秘密文書という。)。したがって、民訴法220条4号ロ(改正法による改正後は、同号ハ。以下同じ)の場合に該当するから、相手方丙には、本件文書2(1)を提出する義務はないというべきである。

b本件文書2(2)について

相手方丙は、本件文書2(2)を所持していない。

c本件文書2(4)について

上記文書は、任意に提出し、申立人らに対し交付済みである。相手方丙は、それ以外の文書は所持していない。

(ウ)a本件文書3(1)について

相手方丙の顧客についての取消処理件数を調査した解約集計表は存在し、同文書については、本案訴訟において、相手方丙の平
成13年4月18日付け再求釈明に対する回答書2に添付して、提出している。しかし、それ以外の文書は、Xとの取引期間が短かったため、相手方丙は所持していない。

b 本件文書3(2)について

相手方丙は、本件文書3(2)を所持していない。

c  本件文書3(3)について

相手方丙は、本件文書3(3)を所持していない。加盟店契約書に存続期間の定めはなく、また取引期間が短かったため、取引条件を変更する必要はなかった。

2 申立人らの反論

(1)本件各文書の必要性

相手方丙は、信販会社に加盟店審査管理義務は法的に課されているわけではないので、本件各文書を証拠として取り調べる必要性はないと主張する。しかし、立替払委託契約は、消費者に対する一種の与信であるとともに、消費者に債務を負担させる契約であるから、相手方らのような信販会社には、公法上の規制のみならず、信義則上、一定の状況下で消費者に不測の損害を与えぬよう配慮すべき義務が発生するのである。
そして、消費者に配慮すべき注意義務が発生するような状況であったか否かについては、信販会社側の主観的事情も加味して判断すべきと考えられるところ、申立人らが本件申立てにおいて提出を求めている文書の多くは、信販会社の主観的事情を窺わせる資料になりうるものであるから、本件各文書を証拠として取り調べる必要があることは明らかである。

(2)本件各文書の存在について

ア本件文書1(2)について

相手方乙及び相手方丙は、上記文書を所持していないと主張するが、相手方丙については、加盟店契約の締結に当たって行う調査に内部基準が存在することは自認しているものであるし、相手方乙についても、加盟店契約の締結に当たり、調査結果を評価していることは自認するものであるところ、おびただしい加盟店を抱える相手方乙が何の基準もなしに漫然と調査、評価することは不可能である。
同業の他の信販会社も、別件訴訟において、加盟店審査基準を有することは認めており、相手方乙や相手方丙だけが加盟店審査基準を有していないとは到底考えられず、本件文書1(2)を所持していることは明らかである。

イ 本件文書2(1)について

相手方甲は、上記文書を所持していないと主張する。しかし、本件文書2(1)に網羅されるような事項を調査せずに、加盟店契約を締結するか否かを判断することはできないし、同業者である相手方乙はその所持を認め、別件訴訟においてこれを証拠として提出していることから、相手方甲だけが、上記文書を作成、使用していないことはあり得ない。
以上より、相手方甲が、本件文書2(1)を所持していることは明らかである。

ウ 本件文書2(2)について

相手方らが、加盟店と取引をするに当たっては、取引決済のため、銀行との取引状況が円滑であるか否かは、加盟店契約締結ないしその継続の判断に当たり重要な要素というべきで、相手方らが取引銀行から聞き取り調査を行っていることは当然である。また、相手方乙は、別件訴訟において、上記文書に対応するものを提出しており、本件において、相手方らが、上記文書を作成、使用していないことはあり得ない。

以上より、相手方らが、本件文書2(2)を所持していることは明らかである。

エ 本件文書2(3)について

相手方甲は、上記文書を所持していないと主張する。しかし、信販会社が新たに加盟店契約を締結する場合、まず第一に、加盟店になろうとする者から、自己の経歴を含む多くの情報を報告させて審査するのが当然であり、また、他方で、加盟店となろうとする者も、加盟店契約を締結するために、自己の会社概要を記載した書面を提出するのが当然である。しかるに、相手方甲が、本案訴訟で提出したXとの契約書(乙A2)には、Xに関する情報の記載が十分ではなく、これでは審査ができないはずである。
申立人らは、何も経歴書と題する書面の提出だけを求めているのではない。実質的に、同様の事項が記載された文書の提出を求めているのであり、上記のとおり、当該文書が存在するのは明らかであるから、早急に提出されるべきである。

オ 本件文書2(4)について

上記文書について、相手方甲は、R工業株式会社(以下R工業という。)の販売店としてのXとの間のクレジット利用契約書及び加盟店付帯契約書を乙A第2号証として提出しているが、上記のとおり、同号証の記載だけでは、Xに関する情報が十分ではなく、これでは審査ができないので、加盟店契約申請に当たり、さらに詳細な内容を記載した書面を一体として提出させているはずである。申立人らが提出を求めているのは、このような詳細な内容が記載された相手方甲作成にかかる文書であり、これは未だ提出されていない。相手方乙は、本件文書2(4)の存在を認めており、さらに、同文書に対応するものを別件訴訟において証拠として提出している。したがって、同業者である相手方甲が、上記文書を作成、使用していないとは考えられない。

以上より、相手方甲が、本件文書2(4)を所持していることは明らかである。
相手方丙についても、本件文書2(4)を任意に提出したとしているが、上記のとおり、申立人らが提出を求めているのは、相手方丙作成にかかる文書であり、これは未だ提出されていない。相手方丙が、これを所持しているのは、相手方甲の場合と同様に明らかである。

カ 本件文書3(1)について

相手方甲及び相手方丙は、上記文書を所持していないと主張するが、Xとの加盟店取引を継続するに当たり、Xの販売方法、営業実態、資産、経営内容、他の信販会社のシェア、割賦購入あっせん契約の申込みにかかる商品及び役務の内容、キャンセルの実態等を知らなければ、取引を継続するか否かの判断はできないはずであるから、相手方らとしても、加盟店契約締結後、それらの点について、自ら積極的に調査するはずである。相手方甲については、前記オのとおり、加盟店契約申請時において、Xに関して詳細な情報を調査、収集しているはずであるところ、加盟店取引継続に当たっても、同様の調査をしているはずであり、その結果を記載した書面がないとは考えられない。また、相手方甲の主張によれば、平成10年6月、R工業の取扱いにかかる顧客に対する与信総額が1億円を超えたため、同年6月末ころから7月中旬にかけて加盟店審査を行い、その後、同年10月中旬ころ、顧客からのモニター商法について問い合わせがあったため、Xに対する事情聴取を行ったというのであるから、少なくとも、平成10年6月ころ以降は、本件文書3(1)が存在することは間違いない。

相手方丙は、Xとの取引期間が短いことを文書の不存在の理由の一つとするが、平成10年10月から平成11年2月まで成約件数が急増する一方で、Xによる取消も多数にのぼっていることからすれば、相手方丙が、Xの実態について調査していないのは不自然である。

以上より、相手方甲及び相手方丙が、本件文書3(1)を所持していることは明らかである。
なお、相手方丙は、解約集計表を本案訴訟において提出したとするが、申立人らが提出を求めている文書は、これで足りるものではない。

キ 本件文書3(2)について

相手方丙は、加盟店契約時における興信所(探偵 調査会社)の調査報告書の存在を認めており、このことからすれば、加盟店契約締結後においても同様の調査を実施しているはずであって、また、他の相手方も同様のはずである。さらに、相手方乙は、別件訴訟において、同文書に対応するものを証拠として提出している
以上より、相手方らが、本件文書3(2)を所持しているのは明らかである。

ク 本件文書3(3)について

相手方乙は、上記文書の存在を自認し、別件訴訟においては、同文書に対応するものを証拠として提出しているところ、そうであれば、同業である相手方甲及び相手方丙が、同様の文書を作成、使用していないとは考えられない。
以上より、相手方甲及び相手方丙が、本件文書3(3)を所持しているのは明らかである。

(3)本件各文書の提出義務について

ア 相手方らは、本件各文書の多くを、自己専使用文書に該当するものであるから、提出義務はないと主張する。
しかしながら、経済社会関係が複雑化し、かつ組織体の規模が大きくなるに伴い、このような組織内の意思形成手続及び決定の根拠を文書により明確化することは、組織内の意思形成の合理性を担保するための必須の要件となるところ、組織体において、外部との一定の法律関係を形成する過程において、その担当者がどのような情報や根拠に基づいてそのように判断し、かつ関与したかを明らかにする文書は、いわば当該組織内の公式文書であり、もはや専ら文書の所持者の利用に供するために作成されたものとはいい得ないから、自己専使用文書には当たらないと解すべきである。今日の消費経済の発展や商品販売の多様化の中で、信販業者は、購入者たる消費者及び販売業者双方に対して、その存在意義を増しているというべく、相手方らをはじめとする信販会社は、今や取引社会においてある種の公共的存在になっているといっても過言ではない。しかしながら、悪質な加盟店による被害発生を受けて、行政当局より、信販会社に対し、加盟店の審査及び管理を徹底するようにとの通達が、従前より再三発せられてきたものであるところ、相手方らは、信販業界において、いわゆる大手の一つに数えられる信販会社であり、事業活動、とりわけ加盟店の審査及び管理の在り方に関し、他の同業者の模範となるべき存在である。

そうであれば、Xとの加盟店契約の締結に当たり、相手方ら担当者が、どのような情報や根拠に基づいて判断し、かつ関与したかなどを明らかにする本件各文書は、上記のような相手方らの取引社会における公共性、重要性、さらには相手方らの事業活動における加盟店審査及び管理の重要性の反映として実務上その作成が必須というべきであり、本件に関する相手方らの各種意思決定の適法性、合理性如何を明らかにし、かつこれを担保するために作成される基本的な公式文書であることは明らかである。相手方らは、本件各文書の大半について外部への公開を予定していないと主張するが、前記のとおり、本件各文書は、相手方らにおいて実務上作成を必須としているものであり、ひとたび相手方らの加盟店への審査及び管理の在り方が問題とされたときには、自己の加盟店審査及び管理の正当性を立証するための基本的かつ重要な証拠資料となることは明らかであって、多くの訴訟において、信販会社の加盟店に対する監督責任が問題とされている現状に鑑みれば、当初から、その証拠としての重要性を認識又は認識し得べくして作成されたものであることは明らかである。

以上のとおり、本件各文書は、個人の場合における日記や備忘録の類とは本質的に異なり、当初から外部への公開を予定して作成し、また作成されるべき文書であり、自己専使用文書には当たらないというべきである。イ本件文書1(1)及び(2)について

相手方甲は、マニュアル、基準等が公開されるならば、マニュアルや基準の裏をかく不正行為を助長するおそれがあるとか、加盟店の審査及び管理に関する営業上のノウハウ、企業秘密が公開されれば、重大な営業上の損失を被るなどと主張するが、本件文書1(1)は、旧通産省による昭和58年3月11日付け個品割賦購入あっせん契約に関する消費者トラブルの防止についてと題する通知等の監督指導(以下本件通知という。)に基づき、外部に公開することを予定して作成されたものであり、加盟店取引の留意点が概括的に記載された文書に過ぎないものである。

したがって、これが外部に公開されたからといって、相手方甲が主張するような不都合が生じるはずはないのである。
ウ本件文書2(1)について相手方甲及び相手方乙は、上記文書が公開されると、信販会社内での自由な意見の表明に支障を来たし、信販会社の自由な意思形成が阻害されると主張する。

しかしながら、上記文書は、Xに関する客観的事実を記載した報告書であり、主観的な意思決定を記載したものではないから、これが公開されたとしても、信販会社内の自由な意見の表明に支障をきたすことはない。相手方丙は、上記文書は、秘密文書であると主張するが、申立人らは、相手方丙が職業の秘密としていると思われる情報の入手経路そのものを明らかにするよう求めているのではなく、あくまで、興信所(探偵 調査会社)から受けた報告の結果を明らかにするように求めているのである。

エ 本件文書2(2)について

相手方甲は、上記文書を開示すれば、今後、金融機関からの聞き取り調査が不可能となると主張するが、金融機関からの聞き取り調査が不可能となるかどうかは、上記文書が、自己専使用文書に該当するか否かとは関係ない。

オ 本件文書3(1)について

上記文書は、第一次的には、相手方らの担当者が、Xの加盟店契約継続の可否を社内で検討するために、Xに関する情報を記載した文書であるが、その内容は、Xに関し相手方ら担当者が把握した客観的事実を記載したものであって、前記のとおり、その文書の性格は公式文書であることからすれば、外部に開示することがおよそ予定されていない文書とはいえないことに加え、その中に、相手方らが守秘義務を負うXの企業秘密、個人のプライバシー等、およそ外部に開示することを予定していない事実が記載されていることは考えられない。

そうすると、上記文書は、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書ということはできず、それが開示されると個人のプライバシーが侵害されたり、個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれは、およそ考えられない。

第3 当裁判所の判断

1 本件各文書の存在等について

(1)本件各文書のうち、相手方甲は、本件文書2(1)ないし(4)(ただし、(4)については乙A2以外のもの)、3(1)、(2)及び(3)の各文書、相手方乙は、本件文書1(2)、2(2)及び(4)(ただし、X作成のもの)、3(2)及び(3)(ただし、X作成のもの)の各文書、相手方丙は、本件文書1(2)、2(2)、(4)(ただし、相手方丙作成のもの)、3(1)(ただし、解約集計表以外のもの)ないし(3)の各文書の存在を否認し、申立人らはこれを争うので、以下検討する。

(2)一件記録によれば、本件通知は、悪質、不良業者を加盟店から排除するため、興信所(探偵 調査会社)等の専門機関に依頼するなどして、販売業者が取り扱う商品及び役務の提供並びに販売方法等を十分把握し、加盟店契約締結の際の審査を厳格化するとともに、加盟店契約締結後も加盟店の管理を引き続き行うことを求めるものであること、相手方らは、加盟店契約の締結に当たり、一定の審査を実施していること、相手方乙が、吸収合併したS株式会社(以下Sという。)において、加盟店契約の締結に当たり加盟店契約申請書という内部文書が、加盟店契約の継続の際には加盟店取引継続申請書という内部文書が、それぞれ作成、使用されており、それら文書には、加盟店ないし加盟店となろうとする者についての調査結果、それを基にした担当者の意見及び契約を締結ないし継続する際の指示事項が付記ないし別紙として添付されていたこと、そして、同申請書による申請に対し、同社の上位部署から加盟店契約承認書及び加盟店取引継続申請認可書という内部文書により、申請の承認がなされており、同文書にも、契約を締結ないし継続する際の指示事項が付記されていることの各事実が認められるが、これらの事実によるも、相手方らがその存在を否認する上記各文書の存在を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

申立人らは、Xに関する調査の必要性や別件訴訟での例を挙げて、上記各文書の存在を縷々主張するのであるが、加盟店契約を締結ないし継続するにあたり、一定の審査、管理をなし、そのために必要な情報を収集し、かつその結果を書面化することは、一般論としては理解できるものの、かような手続をとるか否か、とるとしてどのような形をとるかについては、そもそも私的自治の原則の下、各信販会社の自由な判断に任されているものであり、一定の手続をとるべきことが、法令や会社内部の規則等で、一義的に義務付けられているような場合は別として、そのような事情が一件記録上認められない本件にあっては(なお、本件通知はその記載内容から見て、上記のように、信販会社に対し、一定の手続をとるべきこと法的に一義的に義務付ける趣旨ではないと認められる。)、原告が主張する一般論を以て、本件各文書が存在するとの十分な論拠足り得ないというべきであり、これを採用することはできない。また、同様の理で、ある信販会社において作成、使用されている文書があるからといって、当然に相手方らにおいても作成、使用されているものとは限らず、また別件で作成、使用されたからといって、本件においても当然に作成、使用されているということはできないから、この点に関する申立人らの主張も採用できない。

2 相手方らの提出義務について

(1)次に、相手方らにおいても所持を認める文書(相手方甲につき、本件文書1(1)、(2)、相手方乙につき、本件文書1(1)、2(1)、(4)(ただし、相手方乙作成のもの)、3(1)、(3)(ただし、相手方乙作成のもの)、相手方丙につき、本件文書1(1)、2(1))については、相手方らは、自己専使用文書ないし秘密文書に該当するとして、その提出義務がないと主張するので、以下検討するに、一件記録及び民訴法223条6項の手続の結果によれば、本件各文書のうち相手方らが所持するものにつき、次の事実が認められる。

ア 相手方甲が所持する本件文書1(1)、(2)は事務取扱手続と題するファイルの一部分に存在し、加盟店契約の基準、その契約締結の際の手順及び加盟店管理の基準、その際の手順が詳細に記載されている。

イ 相手方乙が所持する本件文書1(1)は事務規定集と題する文書の一部分に存在し、そこには、加盟店取引の留意点として、加盟店取引の基本姿勢や取引上注意すべき販売形態が記載されているとともに、加盟店の管理として、その手順や調査すべき事項、留意点等が詳細かつ具体的に記載されている。なお、同文書には、具体的な加盟店審査基準は記載されていない。

ウ 相手方乙の所持する本件文書2(1)、(4)(ただし、相手方乙作成のもの)及び3の(1)、(3)(ただし、相手方乙作成のもの)は加盟店取引申請書及びそれに別紙として添付されている申請事由を記載した書面、同じく別紙として添付されている加盟店申請FAX連絡票からなっている。これらの一連の文書には、申請にかかる取引内容、取引条件、加盟店の概要としてXに関する情報、申請を取り扱った相手方乙の担当者の申請に当たっての評価・意見、それに対する相手方乙の上位部署担当者の評価・意見、取引に当たっての指示事項が記載されている。

エ 相手方丙の所持する本件文書1(1)は加盟店審査マニュアルと題する文書である。同文書には、審査の手順について詳細に触れることはないものの、加盟店契約の締結及び加盟店管理に当たって、調査すべき事項、調査の方法、契約締結の審査及び管理において注意すべき事項が詳細かつ具体的に記載されている。なお、同文書には、具体的な加盟店審査基準は記載されていない。

オ 相手方丙の所持する本件文書2(1)は、Xの概要、経営状況、役員に関する事項及びそれら調査事項に基づいた興信所(探偵 調査会社)の評価が記載されている。なお、同文書には、同文書の内容について、その秘密を絶対に厳守すること及び無断で流用した場合には、損害賠償の責めを負う場合があることが付記されている。

(2)自己専使用文書性について

ある文書が、その作成目的、記載内容、これを現在の所持者が所持するに至るまでの経緯、その他の事情から判断して、専ら内部の者の利用に供する目的で作成され、外部の者に開示することが予定されていない文書であって、開示されると個人のプライバシーが侵害されたり個人ないし団体の自由な意思形成が阻害されたりするなど、開示によって所持者の側に看過し難い不利益が生ずるおそれがあると認められる場合には、特段の事情がない限り、当該文書は民訴法220条4号ハ所定の専ら文書の所持者の利用に供するための文書に当たると解するのが相当である(最高裁平成11年11月12日第二小法廷決定民集53巻8号1787頁)。

これを本件についてみるに、相手方らの所持する本件文書1(1)、(2)は、前記認定のとおり、加盟店契約の締結及び加盟店管理に当たって、調査すべき事項、調査の方法、加盟店契約締結の審査やその管理において注意すべき事項、その基準及びそれらの手順等が詳細かつ具体的に記載されたものであるところ、各相手方らの文書を比較してみると、上記事項は相当程度異なっており、各社におけるそれまでの経験を踏まえ、独自の創意・工夫を凝らして作成されたことが窺われ、信販会社において加盟店の審査と管理が極めて重要な意義を有していることに鑑みれば、上記各文書に記載された事項は、それ自体、一種の営業上のノウハウとして財産的価値を有するものと認められる。

そうであれば、上記各文書に記載されている営業上のノウハウは、一般的な公開から保護されるという利益を当然有するというべきであるし、当該文書も、また、一般的な公開を予定して作成されたものでないことは明らかであって、本件文書1(1)、(2)は、民訴法220条4号ロ所定の秘密文書にも相当するものともいいうるものである。さらに、加盟店契約締結の際に行われる審査や、その後の加盟店管理における調査、審査事項や留意事項及びそれらの手順等が一般に明らかになることになれば、上記営業上のノウハウが同業他社に流出し、その財産的価値が失われるという損失を相手方らにおいて被るばかりではなく、それらを不良、悪質な販売業者が悪用して、相手方らと加盟店契約を締結し、その後、それらの業者が顧客とトラブルを起こして、相手方らに損害をおよぼす事態も十分想定され、以上のような損害は相手方らにとって看過し難い不利益であることは明らかである。

したがって、本件文書1(1)、(2)は、専ら相手方ら信販会社内部の利用に供する目的で作成され、外部に開示することが予定されていない文書であって、開示されると相手方らにおいて、看過し難い不利益を生ずるおそれがあるものとして、特段の事情がない限り、民訴法220条4号ハ所定の自己専使用文書に該当するものというべきであり、本件においては、上記特段の事情を認めるに足りる証拠もない。

次に、相手方乙の所持する本件文書2(1)、(4)(ただし、相手方乙作成のもの)及び3(1)、(3)(ただし、相手方乙作成のもの)についてみるに、同文書は、加盟店申請にかかる取引内容、取引条件、加盟店の概要としてXに関する情報、申請を取り扱った相手方乙の担当者の申請に当たっての評価・意見及びそれに対する相手方乙の上位部署担当者の評価・意見、取引に当たっての指示事項が記載されていることは前記認定のとおりであるが、このような記載内容からすれば、上記文書は、相手方乙が、Xとの加盟店契約の締結及びその継続の決定をなすに当たり、その意思を形成する過程で、上記事項を確認、検討、審査するために作成されるものであることは明らかであり、このような上記文書の作成目的、そして既に見たその記載内容等からすれば、上記文書は、信販会社内部において、加盟店契約の締結及びその継続に当たり、その意思形成を円滑、適切に行うために作成される文書であって、法令等によってその作成が義務付けられたものでもなく、加盟店契約の締結及びその継続の是非の審査を行うに当たり作成されるという文書の性質上、忌憚のない評価や意見が記載されることが予定されているものである。したがって、上記文書は、専ら信販会社内部の利用に供する目的で作成され、外部に公開されることが予定されていない文書であって、開示されると信販会社内部における自由な意見の表明に支障を来たし信販会社の自由な意思形成が阻害されるおそれがあるものとして、特段の事情がない限り、民訴法220条4号ハ所定の自己専使用文書に該当するものというべきであり、本件においては、上記特段の事情を認めるに足りる証拠もない。申立人らは、Xの情報に関する部分については、客観的事実であり、主観的な評価ではないのだから、これが公開されたとしても、相手方乙の意思形成には何ら支障がないと主張するが、それらの情報は、雑然と収集されたものではなく、Xに対する審査の基礎とすべく、前示のような一定の調査事項、留意事項に沿う形で収集されたものであり、それ自体が評価と一体を成しているというべきであって、これを独立のものとして公開の対象とするのは相当ではなく、申立人らの主張は採用できない。

(3) 秘密文書性について

次いで、相手方丙の所持する本件文書2(1)についてみるに、同文書は、Xの概要、経営状況、役員に関する事項及びそれら調査事項に基づいた興信所(探偵 調査会社)の評価及び、同文書の内容について、その秘密を絶対に厳守すること及び無断で流用した場合には、損害賠償の責めを負う場合があることが付記されていることは前記認定のとおりである。

民訴法220条4号ロに規定する同法197条1項3号職業の秘密とは、その秘密が公開されてしまうと当該職業に深刻な影響を与え、以後の職業の維持遂行が不可能あるいは困難になるものをいい、その秘密主体は、文書の所持者が原則ではあるものの、第三者の秘密でも、当該第三者との間で、明示、黙示の契約で守秘義務を負う者や、当該第三者の被雇用者、補助者など、当該秘密につき重要な利害関係を有し、これを守らなければならない立場にある者の秘密も含まれると解するのが相当であるところ、本件では、前記のとおり、相手方丙は、興信所(探偵 調査会社)との契約で、調査内容について秘密を守らなければならない立場にあることは明らかである。また、興信所(探偵 調査会社)という職業の性質からすれば、取材源如何にかかわらず、その調査内容が一般に公開されること自体が、その営業上の信用を大きく失墜させることは明らかであり、爾後の職業の維持遂行が不可能あるいは困難になるものといえる。したがって、相手方丙の所持する本件文書2(1)は、上記職業の秘密が記載された文書といえ、また、興信所(探偵 調査会社)により黙秘の義務が免除されたと認めるに足りる証拠はないので、民訴法220条4号ロ所定の秘密文書に該当するというべきである。
(4)以上のとおり、相手方らが所持を認める本件各文書は、そのいずれもが、自己専使用文書ないし秘密文書に該当するものであり、その提出義務を認めることはできない。これに対し、申立人らは、上記各文書の申立人ら主張の公式文書性を強調し、自己専使用文書性等を否定するが、前記各説示に照らし、申立人らの主張は採用できない。

第4 結論

以上によれば、本件申立てはいずれも理由がないから却下することとし、主文のとおり決定する。

平成13年12月11日

広島地方裁判所民事第2部

裁判長裁判官渡邉了造
裁判官谷口安史
裁判官秋元健一

別紙

文書目録

1 相手方らが、加盟店契約の締結に際し、相手方ら自身のリスク管理のために自主的に実施している、
(1)加盟店審査のためのマニュアル等の資料
(2)加盟店審査基準を記載した文書

2 相手方らと株式会社X(以下Xという。)との加盟店契約時における、
(1)相手方らが、Xの取り扱う商品、販売方法、営業実態、経営内容、他の信販会社の動向等について調査した結果を記載した書面(興信所(探偵 調査会社)に依頼して、入手
したXに関する調査報告書を含む。)
(2)相手方らが、Xの取引先金融機関から、Xの聴取調査をした結果が記載された書面
(3)相手方らがXから提出を受けた経歴書
(4)加盟店契約申請書

3 相手方らとXとの加盟店契約締結後における、
(1)相手方らが、Xの販売方法、営業実態、資産・経営内容等について調査した結果(相手方らが、Xに関して、他の信販会社のシェア、割賦購入あっせん契約の申込みにかかる商品及び役務の内容、キャンセルの実態等について調査をした結果を含む。)を記載した書面
(2)相手方らが、興信所(探偵 調査会社)に依頼して入手したXに関する調査報告書

(3)加盟店取引継続申請書